・ノーラン作品大好きっ子なので公開翌日にIMAXで観てきました。
・素晴らしい作品でした。
・題名通りオッペンハイマーの伝記映画で、ノリは心理サスペンス。
・オッペンハイマーの栄光と没落が3つのパートで展開されます。
・原爆を開発していくパート。
・アカ狩りで告発されて原爆の開発を振り返るパート。
・オッペンハイマーと対立した投資家が商務長官に相応しいかの公聴会パート。
・多面的にオッペンハイマーはどういう人物なのか、何を考えているのか描写されます。
・誰も作ったことがなかった原爆を開発する約束された栄光。
・本当にきちんと爆発するのかという最後の実験のカタルシスに向けて、当時の優秀な物理学者を扇動し、荒野に街を作り上げていく世界有数のプロジェクトを目の当たりにする興奮。
・未曽有の大量殺戮兵器を開発して世に出してしまった代表者としての毀誉。
・同世代的に開発しながら自覚し、戦況からもう開発しなくてもいいのではないかという指摘をどう踏み込えていくのか。
・実際の使用を指示するのは政治家で、実際使用した結果敵国の知らぬ人間が数多が死んだことを民衆は喜ぶ。そこに開発者がどうかかわり、どう振る舞うのか。
・あるいは原爆の死者の写真を直視できず、一人の恋人の死に大いに動揺するその人間たる姿をどう評価するのか。
・敵国のソ連への親和性があったのか、なかったのか、スパイを働いたのか、働かなかったのか。
・より破壊力がある水爆を当時開発に反対したのはアメリカの足を引っ張る意図があったのか、それ以外の何かか。それは倫理感か。
・彼の持つ倫理とは。
・焼き尽くす炎を生み出した理性に対して、それは人倫にもとる善きものなのか。
・当時の計算と計算ミスから出た大量殺戮以上に恐るべき可能性――一度燃え出したら止まらないかもしれない可能性がおそらくゼロだが、完全にゼロではなく、ニアゼロなのを許容したその倫理が本当に善きものなのか。
・そして内面をアメリカへの忠誠心と親ソ連かどうかの政治的で判断された彼の倫理感に対する裁きは正しかったのかの再評価。
・凡俗たる投資家から見たオッペンハイマー――彼は裁かれたがっていたから裁いてやった――は正しいのか。
・最初から最後まで今繰り広げられているシーンの意味を考え抜かさせて、息をつく暇がありませんでした。時間のシャッフルの熟練した手つきはそのままに、アクションやアトラクションではないサスペンスをこうも練り上げられるとは流石の一言。
・最後に。フローレンス・ビューが非常に存在感あり、美しく、眼福でした。